LayerXのAI・LLM事業部にjoinしました

この記事は、「#日めくりLayerX」と題して発信するブログリレーの2025年7月10日の記事として投稿しています。7月はAI・LLM事業部(Ai Workforce)の集中月間です!「私の◯◯愛を語る」というテーマに沿ってお送りします。
このたび7月より、LayerXのAI・LLM事業部にjoinしました。
職種としては、慣れ親しんだデータ◯◯といったロールからは少し距離を置き、ソリューションコンサルタントやプロジェクトマネージャーに近いロールを担うことになります。
参画の理由を一言で語るのは難しいですが、今回のアドベントカレンダーのテーマが「私の◯◯愛を語る」ということで多少無理に当てはめると、意思決定の理由に他でもない「データへの愛」があったことは間違いありません。
僕は元々データアナリストであった身から、データプロダクトマネージャーへの転身を宣言して、数年間を過ごしてきました。
ずっとデータに関わる仕事が好きで、ここまで続けてきたからこそ、これからの時代にデータとどう向き合うべきか、真剣に考えた結果の選択でした。
今回は、転職・入社エントリのタイミングだからこそ、キャリア思考というあえて自分へ矢印を向けてみて、「データへの愛」が溢れながらなぜ今回の決意をしたのか、その経緯について述べてみます。
AI時代に中途半端なデータ人材はどう生きるべきか
データ分析の副業参画からスタートアップに飛び込み、事業や組織に求められる仕事をひたすらこなして、素晴らしい同僚にも恵まれる充実した日々。
データアナリストだった身から転身し、かれこれ3年以上データプロダクトマネージャーとして仕事をこなしてきて、本当にたくさんの学びがありました。
データへの愛が一方的に深い自分が少しだけ得意で、背中を合わせた仲間から求められる役割で、成果が残せているのであれば、個人の細かいキャリアのことなんか全く気にしていませんでした。
それとは裏返しに、自分自身の将来進むべき道についても、ずっと悩んできました。
もしかすると、いまも絶賛悩んでいる最中かもしれません。
とはいえ、データに関わる仕事は昔も今も大好きですし、これからも関わっていきたい思いも変わりません。
あちこちツギハギ見様見真似で、データプロダクトマネージャーという職種を定義し、まだ前例が少ない中で数年藻掻いていたのもあって、キャリア迷子になるのは無理もないのかもしません。
偶然必要性に駆られてでしたが、しがないデータアナリストであった身からピボットを経験できたことは本当にラッキーでしたし、当時の意思決定としても大正解でした。
一方で、ここ最近の生成AIの進化を見ると、僕のような半端者のデータ人材は取って代わられる未来も容易に想像できました。
例えば、データの前処理や可視化などはチャットベースで即座にやってくれるので、非常に業務効率が良く、ビジネス側の人間だけで数字を出すこともでき、単なるデータ抽出・可視化屋さんは必要が無くなってしまいます。
少なくとも、僕が数年前にデータアナリストとしてやっていたような分析については、容易に代替されることは明らかです。
そんなふうに、データ分析の一部ハードスキルはマクロトレンド的に、今後は民主化が尚一層進んでいくことが予想されます。
いままでも、データアナリストと名乗っていなくてもそれっぽい仕事をしている人は存在したでしょうし、今後はデータを使いこなす人がもっと増えていくのかもしれません。
加えて、専任のデータアナリストとしての期待値は企業によっても様々で、他者を巻き込んだコミュニケーションやプロジェクト推進が要求されることもあり、はたまたプロダクト側・ビジネス側どっちつかずになっていたり、転職しようにも再現性があったりなかったりします。
さて、そんな時代にどう振る舞うべきでしょうか。
また昨今の事情に限らず、振り返ると数年前から、データアナリストはより事業やプロダクトへと染み出すコンピテンシーが求められるのでは、という論調は根強いです。
AI導入の過渡期である現時点においては、データアナリストが発揮すべきケイパビリティとして、染み出した先で自らデータやAI活用をする姿を見せることも、また違った戦略なのかもしれません。
少なくともまだアーリーと呼んでギリギリ許されるタイミングなので、幅広い場所で歓迎されるはずでは、という願望もあります。
例えば、プロダクトに一定の抽象度での関わり合いができれば、PdMとデータアナリストが共通のKPIを持って、開発や意思決定への関与を深め、AIができないような深掘り分析や仮説検証が求められる案件に対して、リソースを集中させることができるかもしれません。
あるいは、事業責任者や経営陣との関係性構築、現場への解像度を上げるための情報収集をすることによって、チャットベースのような受け身ではない、攻めの価値提供もできるようになるかもしれません。
もっと言うと、AIによってデータ分析自体が民主化されたとしても、得られる知見を言語化・体系化し、それらを適切に案内・翻訳したうえで、実行まで伴走することは人間にしか出来ないし、最後に意思決定をするのもまた人間です。
とはいえ、これまでの既存業務に追われ、必要性を理解しつつも染み出しが出来ていなかった場合など、言うは易く行うは難し、の場合が多いでしょう。
ただでさえ純粋なデータアナリストとして、他の職種との関係構築や提供価値を考える必要があった近況に、さらにAIという変数が加わるのですから、難易度はより高まります。
これはデータプロダクトマネージャーという職種でも同様で、今後はAIとデータは表裏一体で進化を続けていくため、データのみならずAIの素養がある前提のプロダクト開発がなされていくと想像した場合、単なるデータバックグラウンドを持つデータプロダクトマネージャーというだけでは、ろくに太刀打ちできなくなってしまいます。
さて、そんな時代にどう振る舞うべきでしょうか。
データへの愛が繋いでくれた御縁
きっかけは、SNSで流れてきた以下の記事を見かけたことでした。
記事ではLayerXのAI・LLM事業部において、タスクの分解や構造化・適切な出力設計・前処理の工夫・関係者との調整といった場面で、データアナリストとして培ったスキルが存分に活かされる点が述べられています。
スタートアップ界隈の人間として、それまでLayerXのことは見知っていたつもりではありましたが、一方で自身のキャリアとして想起したことがなかったため、非常に興味深く拝見させていただいたのを覚えています。
仮にいままでの僕がデータ領域としてのキャリアを歩んでおらず、また愛を持って接したことがなければ、きっと目には止まっていなかったことでしょう。
そんな背景も手伝い、こちらからドアノックしてお話させていただくと、それまでのデータアナリストからデータプロダクトマネージャーへのピボットを始め、経験した様々なことがフラッシュバックしたりするなど、話も大いに盛り上がったのでした。
さらに、LayerXの中でも新しい別プロダクト・組織として立ち上がったばかりというフェーズも、いつかを思い出して惹かれたポイントの一つでした。
クライアントからの要望を適切に抽象化してあるべきを考え、プロダクトにフィードバックしていく必要があったり、これから組織規模を拡大していくというステージ感など、かつて副業からスタートアップに関わり始めた感覚に通じるものがありました。
今後の拡大に伴っても、組織と事業のバランス、それに伴う成長痛など、恐らく思い付くことほぼ全ては起こり得ると想像しますが、一方でそれを悲観しすぎずに、良くも悪くもある程度余裕を持って楽しむこともできるのではないか、と。
実際に業務を始めてみると、困ったことを社内に投げると直接エンジニアが回答を返してくれるなど、どこか懐かしい、お互い顔が見える規模ならではの距離感の近さを感じる日々です。
これまで事業や組織に求められるまま積み重ねてきたキャリアではありましたが、「いままでやってきたことはちゃんと意味があったのかもしれない」と感じたため、オファーを受諾することに決めたのでした。
もちろん、データハンドリングや精度評価、ビジネスとプロダクトのブリッジやステークホルダーとのコミュニケーション、各社に入り込んで得た業務理解やロジック構築の経験なども、業務において強みになると信じています。
個人の事を抜きにしても、今後のプロダクトの発展や更なる価値提供を想像すると、インプットした資料やデータを綺麗に格納しておき、AIエージェントが分析しやすくするためのユースケースを整理していくなど、まさに僕自身が仕事を取って代わられる実感を得たバックグラウンドが活きることもありそうでした。
LayerXのAI・LLM事業部でやりたいこと
今回の参画において、もちろんLayerXのAI・LLM事業を成功させたい気持ちは大前提です。
一方で転職の際には、自身の長く続く社会人人生についても責任を持ち、併せて深く考える必要があるでしょう。
僕自身子どもも産まれ、これまでよりも時間的・思考的リソースが限られてしまう以上、可愛い我が子を保育園に預けてまで過ごす仕事の時間・キャリアをどう最大化させていくか、という視点でも納得できるまで熟考を重ねました。
出した結論としては、「データへの愛」を持つ自分が引き続きデータ領域で戦っていくとしても、あるいは今後それ以外どんなキャリアを歩むとしても、後述のような経験は必ず身になるであろう、というものでした。
たとえば、セールスやコンサルタントとしての歴が長いメンバーに同席して、プレッシャーのあるクライアントフェーシングに向き合い、課題や要望を丁寧に吸い上げてやれること・やれないことを率直に伝え、契約に紐づくデリバリーを進めていくこと。
こういったやり取りは、社内向けの分析やデータ整備業務とは異なる緊張感や瞬発力が求められます。
データ人材はともすれば、インターナルな役割に偏ってしまうこともあるため、対外コミュニケーションやBizDevの現場を間近で見ることで得られる視座の変化は、環境を移したとしても非常に新鮮です。
また、一定ビジネス側に比重を置く人間の立場から、未成熟なプロダクトに対しての開発要望をどう優先づけていくか、受託に寄りすぎない・局所最適に陥らないように、バランスを取ることも重要です。
これまでもデータプロダクトマネージャーとして、ステークホルダーとの期待値調整・他者の巻き込み・プロジェクトマネジメントといった経験を通じ、プロダクト開発とは単なる仕様決定だけではない、スタンスや思想を示す営みでもあることも痛感してきました。
今回の機会でも改めて、スタートアップならではのスピード感とスコープ感が求められる環境において、やりきれなかったことの続きを試行錯誤できるチャンスだと捉えています。
そして、AIやデータ活用を実業務やプロダクトに組み込むような経験は、これからの時代ますます価値が高まるものと考えています。
構造化されていない文書をひたすら手足でかき集めて使えるデータにしたり、暗黙的な業務知識を解きほぐしてワークフローにしたりと、泥臭い作業も厭わない覚悟を持っています。
このような、前職でも向き合ってきたリアルとデジタルの間のギャップを埋める営みを続けていくことは、今後より良い社会を作っていくに当たって必要不可欠とされるはずです。
AI文脈では、チームで毎週職種横断で最新のニュースを読み解く時間が設けられていたり、ビジネス側の人間でも業務でClaudeやCursorを使い倒して、技術トレンドを肌感覚で掴みにいくカルチャーもあります。
AIやデータが今後も世界の重要要素であり続けるのは間違いなく、そんな未来にBetして、技術的にも優れた仲間たちと共に働ける環境は、とても刺激的です。
少し話は逸れますが、OpenAIやPalantirといった先進企業では、自社のプロダクトを抱えたうえで顧客の業務に深く入り込み、一定の権限を持って個社ごとにAIに適応させていくようなエンジニアロール、Forward Deployed Engineer(FDE)が定義されているそうです。
つまり、AIあるいはデータといった領域で今後も戦っていきたい願望があるのであれば、たとえエンジニアリング・プロダクトに軸足を置く人間だったとしても、多かれ少なかれ顧客理解やビジネス面への染み出し経験は不可欠となっていくのかもしれません。
同ジョブタイトルに限らずとも、またデータ◯◯や◯◯エンジニアといった職種について、今後は名称こそ同じであれどその役割が変わっていくことだって、もはや否定できないのではないでしょうか。
データへの愛とAIが背中を押してくれた
個人としても守るべき家族ができた今、生き残っていくためにスキルを磨き続けなければならない。
だからこそ、子どもが生きていく未来はどんな世界なのか?その世界に向けて親として何を学ぶべきか?どのように準備行動すべきか?いまこの瞬間に何を優先するべきか?、、、を常に問答し続けています。
なにより、子どもが大人になる頃には、きっとAIは特別な存在ではなく、空気のように当たり前になっているはずです。
だからこそ、親である自分自身がAIと共存して使いこなす立場でありたい、そしてその姿勢を失いたくないと思っています。
一方で、平凡なデータアナリストのままでは、仕事がAIに取って代わられる未来を想像することは、決して特別なことではなくなってきています。
とはいえ、データへの愛が溢れる僕としては、これからもデータの仕事から完全に離れるつもりはありません。
むしろ、AIの進化と共存するためにも、より一層のピボットやスキルの深化を目指していきたいです。
たとえば、AIが活用しやすいようにデータを整備し、その基盤を作っていくという仕事は、これまで積み重ねてきたデータ関連の専門性がそのまま活きる領域です。
テックジャイアントの肩に乗っていれば、AIによるソリューションが効率的に提供できる未来を見据えた時にも、その土壌となるであろうデータ領域を離れる理由は見つかりません。
また、生成AIが個人の業務を日々効率化するタイミングで、何か手を動かす経験値を重ねておくことは、この瞬間においてもきっと大きな意味を持つはずです。
手を動かすのはもともと好きですし、データエンジニアやアナリティクスエンジニアといった隣接する職種にも興味が湧きつつ、データプロダクトマネージャーとしての道も引き続き探求していきたいです。
加えて、AIが活用しやすいようなデータ整備や仕組み作り、業務効率化、そしてそれをカルチャーとして根付かせていくような営みも、非常に魅力的です。
どの方向に進むか、どのようなスキルを身につけるべきかは、状況を見ながら柔軟に判断していく必要がありますし、おそらく想像よりもずっと速く変化していくでしょう。
だからこそ、少なくとも今この瞬間、人間にしかできないことを、自分なりに少しでも伸ばしてみたいという思いがあります。
誰にも未来を完璧に予測することはできないし、する必要もないのかもしれません。
結局のところ、いまこの瞬間に正面から向き合っていくことでしか、未来を切り開くことはできないのです。
キャリアには、きっと正解も不正解もありません。
たらればを言い始めたらきりがないけれど、意思決定をしたのであれば、それを正解にすべく動いていくしかない、そんな覚悟で僕は一歩を踏み出すことにしました。
データへの愛があるからこそ、いまこの瞬間は、AIにBetしてみたい。
そんな想いを持つ方がいたら、ぜひ一緒に働きましょう。